ED(勃起不全)治療薬として、「バイアグラ(成分名:シルデナフィル)」という薬剤があります。
バイアグラはED治療薬としては、一番歴史が長く一般的に知られた薬剤です。最近ではシート状のバイアグラ「バイアグラODフィルム」が新しく発売され、多様化するED治療薬の中でもまだまだ存在感を発揮しています。
EDとは
EDは「Erectile Dysfunction」の略称で、erectileが「勃起性の」、Dysfunctionが「機能不全」と訳されますので、直訳すると「勃起機能不全」となります。具体的には、勃起が十分でなく挿入の難しい状態のことを指します。疾患などのEDの原因によって、EDかそうでないかを判断される方がいらっしゃいますが、正確には前述のような勃起が十分でない「状態」のことを指しますので、緊張していて勃起しない、アルコールの摂り過ぎで勃起しない、性行為中に中折れするといったこともEDに含まれます。
原因としてはさまざまな可能性がありますが、多くがバイアグラ(成分名:シルデナフィル)などのED治療薬によって改善することができます。EDの原因を改善するものではないため、性行為前にその都度服用する必要があります。
バイアグラとは
バイアグラ(成分名:シルデナフィル)は、アメリカのファイザー社で開発されたED(勃起不全)治療薬です。活気がある、力強いといった意味の「vital(バイタル)」と、勢いよくあふれ出る「Niagara(ナイアガラ)」とを掛け合わせて名づけられたと言われています。元々は狭心症という心臓の病気のために開発されたものですが、治験からEDを改善する効果が認められたため、その後世界初のED治療薬として承認されました。
2014年にジェネリック医薬品も発売されており、バイアグラジェネリックは、同じ有効成分であるシルデナフィルが同等に含有されているため、作用や服用方法は同じになります。また、バイアグラよりも安価に購入することができるため、厚生労働省でもジェネリック医薬品を推奨しています。
勃起とバイアグラの効果
バイアグラを飲むと性欲が高まる、興奮するといった誤解をなさっている方がいますが、バイアグラの効果はあくまでも「勃起を促す」効果に留められています。バイアグラの効果の前に、どのように勃起がおこるのかを確認します。
まず五感で受けた性的な刺激によって、大脳より伝達物質が放出されます。これが脊髄の「勃起中枢」に届き刺激されると、また勃起中枢より神経を介してペニスの海綿体へ血流を促す信号が出されます。この信号を受け取るとペニスでは「No(一酸化窒素)」が放出され、そのNo(一酸化窒素)が筋肉や血管を刺激することによって、「サイクリックGMP」という物質が放出されます。このサイクリックGMPによって、ようやく海綿体への充血が促され勃起が起こります。
性的刺激→大脳→勃起中枢→海綿体の充血
勃起を促すにはサイクリックGMPが多いことが重要ですが、ずっと勃起を維持したままでも困ってしまいます。そのため、サイクリックGMPは「PDE-5」という酵素によって、分解されやすくなっています。バイアグラ(成分名:シルデナフィル)には、このPDE-5の働きを阻害し、サイクリックGMPの分解を遅延させる効果があるため、より勃起が促されやすい状態にすることができるのです。バイアグラ以外のレビトラ、シアリスといったED治療薬が総じて「PDE-5阻害薬」と称されることがあるのはこのためです。
EDのほとんどがバイアグラなどのED(勃起不全)治療薬によって改善することができる。と前述いたしましたが、この勃起のメカニズムを確認していただいてもわかるように、刺激の伝達が十分に行われなければ、バイアグラも十分に効果を発揮することができません。重度の神経障害をお持ちの方にはこのバイアグラが効かない可能性もあります。
バイアグラの副作用
有名なED治療薬としてバイアグラ(成分名:シルデナフィル)以外にも、レビトラ(成分名:バルデナフィル)、シアリス(成分名:タダラフィル)など合計3種類のED治療薬がありますが、バイアグラは比較的副作用が多いと言われています。レビトラやシアリスは、バイアグラの後に開発が進み、承認を受けた薬剤のため、改良がされており、特に副作用の面では、バイアグラの副作用がきついなと思った方は他の2剤を試してみるのも良いかもしれません。
バイアグラの添付文書によりますと、バイアグラの国内の臨床試験において157例中、65例(41.40%)に副作用又は臨床検査値(臨床検査において基準となる値)異常が認められたとしています。主なものは、血管拡張(ほてり、潮紅)17例(10.83%)、頭痛17例(10.83%)、CK(エネルギーの代謝に関わる酵素の血中量)増加9例(5.73%)など、と続いています。
一方で外国で実施された試験では、少し割合が高くなっています。823例中261例(31.71%)に副作用または臨床検査値異常が認められており、主なものとして血管拡張(ほてり、潮紅)125例(15.19%)、頭痛109例(13.24%)、消化不良28例(3.40%)となっています。
また市販後に行われた調査では、3152例中166例(5.27%)と割合が減っています。主なものが血管拡張(ほてり、潮紅)97例(3.08%)、頭痛34例(1.08%)、動悸13例(0.41%)となっています。
もし上記のもの以外で日常生活に支障がでるような副作用が出た場合は、すぐに服用を中断し医師にご相談ください。
バイアグラがアメリカで販売を開始した当時、個人輸入でバイアグラを入手した日本の方が自己の判断で服用し、死亡したという事例があります。この事故がクローズアップされたことで、マスコミなどで危ない医薬品として報じられることがありました。このケースは亡くなられた方が狭心症の薬剤を常用しており、これがバイアグラと併用することが出来ない禁忌薬であったためそのような事故になってしまっています。しかし、バイアグラは正しい服用方法を守っていただければ決して危ない薬剤ではありません。ED治療薬の相談は必ず専門の医療機関で処方を受け、医師の指導の下、正しい方服用法でご使用ください。